PDF を黒塗りしても、文字は消えていません

左は黒塗りされた PDF。右はその PDF から取り出した文字で、黒塗りの下にあったはずの名前と口座番号が読める状態で並んでいる
左が黒塗り後の見た目。右は同じファイルから取り出した文字です。隠したはずの 2 行がそのまま出てきます。

契約書の相手先名を黒く塗って、取引先に送った。議事録の個人名を隠して、公開した。その PDF、黒い四角の下に文字が残っているかもしれません。見た目は完全に真っ黒でも、コピーすれば読めてしまうことがあります。

実際に無料の黒塗りサービスで試したところ、隠したはずの名前と口座番号が、そのまま取り出せました。 上の画像がその結果です(2026 年 9 月 25 日に確認)。

1. 何が起きているのか

PDF の中では、文字と図形が別々に置かれています。 黒い四角を描いても、それは文字の上に重ねただけで、下の文字はそのまま残ります。

紙にマジックで塗るのとは違います。紙なら塗った時点でインクが文字を覆い、二度と読めません。 PDF は「一番上に黒い紙を置いた」状態に近く、その紙をどければ下が読めます。 そして「どける」のは、文字をコピーするだけで済みます。

Word で図形を置いてから PDF にした場合も、同じことが起きます。 蛍光ペンや塗りつぶしの書式も同様です。

2. 実際に試しました

確かめるために、合言葉を入れた PDF を作りました。SECRETNAME-7431 と JP-9988-7766-5544 の 2 行です。 これを無料の黒塗りサービスにかけ、その 2 行の上に黒い枠を引いて、書き出しました。

出てきた PDF を見ると、見た目は問題ありません。2 行はきれいに黒く覆われています。 ところが文字を取り出すと、2 行ともそのまま出てきました。 ファイルの大きさもほとんど変わっていません(1,206 バイト → 1,576 バイト)。黒い四角のぶんだけ増えて、文字は 1 文字も減っていないということです。

どのサービスかは書きません。仕組みの問題で、同じ作りのものはほかにもあるためです。 直っている可能性もあります。大事なのは「自分の書類で確かめる」ことです。

3. 自分の書類で 30 秒で確かめる

道具は要りません。お使いの PDF 閲覧ソフトだけでできます。

  1. 黒塗りした PDF を開きます。
  2. Ctrl + A(Mac は ⌘ + A)で全部を選びます。
  3. Ctrl + C でコピーします。
  4. メモ帳などに貼り付けます。

隠したはずの言葉が貼り付いたら、その PDF はまだ配れません。何も貼り付かなければ、その PDF には文字の層がありません(安全な状態です)。

検索でも確かめられます。閲覧ソフトの検索欄に、隠したはずの名前を入れてみてください。見つかったら残っています。

ページ数が多くて目で追いきれないときのために、PDF の文字を取り出すという簡易なツールを作りました。 PDF を入れると、取り出せる文字をページごとに並べます。

4. 本当に消す方法

確実なのは、ページを画像にしてしまうことです。 文字の層が無くなるので、コピーも検索もできなくなります。「黒い紙をどけても、下が白紙」の状態です。

PDF 編集ソフトの「墨消し」機能も、文字そのものを削除します。 黒く塗るだけの操作とは別の機能なので、名前で選んでください。 Adobe Acrobat Pro(月額 1,980 円)などの有料ソフトに入っています。

いちばん確実なのは、そもそも隠したい情報を入れずに作り直すことです。 元の文書で該当部分を削除してから PDF にすれば、消し忘れも起きません。

5. 無料で安全に消せるサービス

有料ソフトを買わなくても、正しく消せるものがあります。JobDoneBot の PDF 墨消しを試しました。

  • 「完全削除」と「高速(視覚的隠蔽のみ)」の 2 つのモードがあり、 違いが画面上で説明されています。既定は完全削除です
  • 完全削除で処理した PDF から文字を取り出したところ、1 文字も出てきませんでした。 ファイルの大きさも 1,206 バイト → 28,412 バイトに増えており、画像化されたことが分かります
  • 登録もインストールも不要で、ファイルはサーバーに送られません

2026 年 9 月 25 日に確認した結果です。仕様は変わることがあるので、 大事な書類では3 章の方法でご自身でも確かめてください。

6. 安全に消すと失うもの

画像にして消す方法には、避けられない代償があります。その PDF 全体が、検索もコピーもできなくなります。隠した部分だけでなく、文書のすべての文字が画像になるためです。

受け取った人が本文を引用したい場合や、あとから文書を検索したい場合には不便になります。 これは特定のサービスの欠点ではなく、この消し方に共通する性質です。

検索できる状態を保ったまま消したい場合は、PDF 編集ソフトの墨消し機能をお使いください。 該当部分の文字だけを削除し、ほかの文字は残します。

よくある質問

スクリーンショットを撮って貼り直せば安全ですか?

安全です。画面を撮った画像には文字の層がないので、コピーできる文字は残りません。 手間はかかりますが、確実な方法のひとつです。

印刷してスキャンし直すのはどうですか?

これも安全です。紙を経由するので文字の層は完全に失われます。 ただし画質が落ち、手間もかかります。

Word で黒い図形を置いてから PDF にしました。大丈夫ですか?

危ない可能性が高いです。図形は文字の上に重なるだけで、文字は残ります。 3 章の方法で確かめてください。

黒く塗った部分を選択できないのですが、それなら安全ですか?

判断できません。その部分だけ選べなくても、全体を選んでコピーすると 出てくることがあります。必ず全選択で試してください。

画像だけの PDF なら、そもそも安全ですか?

文字の層という意味では安全です。ただし黒塗りが画像の上に別の図形として 置かれている場合は、その図形を外せば下の画像が見えます。 画像そのものを塗りつぶしてから PDF にするのが確実です。

すでに送ってしまいました。どうすればいいですか?

まず、送った PDF が実際に残っているかを 3 章の方法で確かめてください。 残っていた場合の対応は組織の規定によりますので、ご自身で判断せず、責任者にご相談ください。